2010年10月23日土曜日

「Webコンテンツを現実空間に拡張」 セカイカメラのAPI公開

 頓智ドットは3月4日、iPhone向け拡張現実(AR)アプリ「セカイカメラ」のAPI「OpenAir for Publishers」の公開に合わせたイベント「Bootstrap 1.0」を開催した。

 同社の井口尊仁代表は、「拡張現実空間に、初めてオープンなプラットフォームがやってくる記念すべき瞬間」と意気込み、APIの内容と、APIを使ったコンテンツ連携の先行事例を紹介した。 高濃度酸素水


●セカイカメラ、波乱の1日

 イベントの開催日はセカイカメラにとって波乱に富んだ1日だった。新聞に掲載されたiPhoneの広告でセカイカメラが紹介されたかと思えば、App Storeから突如アプリが削除された。Appleの審査基準が変更された模様で、無線LANを活用する一部のアプリが公開できなくなり、クウジットの無線LAN位置測位技術 rmt ff14
「PlaceEngine」を採用しているセカイカメラもApp Storeから姿を消した。同社は次期バージョン「セカイカメラ v2.2」の近日公開に向け準備を進めており、v2.2を発表するタイミングでApp Storeでの配信を再開させる予定だ。

 無線LAN機能を取り除いても通常のGPS測位で屋外の利用はまかなえるが、エリアやフロアを認識してAR空間を構築する屋内向け商用
ソリューションにはPlaceEngineが不可欠で、今回の件の影響は少なくない。イベント当日は「対応はこれから」と同社COOの佐藤僚氏は話していたが、PlaceEngineがAppleの審査をパスできなければ、屋内ソリューションは新しいアプローチを強いられることになりそうだ。

●第1弾のAPIは有償サービス向けに提供 将来的には無償APIの公開も視野に

 
今回のイベントで公開されたAPIは、外部サーバにあるWebコンテンツをセカイカメラと連携させ、AR空間にエアタグとして表示できるようにするもの。セカイカメラユーザーからのリクエストと、コンテンツプロバイダーが自社サーバに抱えるコンテンツとをセカイカメラのサーバが中継する仕組みで、「マスターデータをパブリッシャーのサーバ側に配置することで
、既存のデータベースや管理ツールをそのまま利用できる。データをキャッシングしてリクエストをコントロールできるので、無駄なアクセスも省ける」(井口氏)。

 このAPIは法人向けの有償サービスとして提供される。APIを使って表示できるエアタグは「オーソライズドタグ」として表示され、アイコンのデザインがカスタマイズ可能で、エアタグの内
容が金色のフレームで縁取られる。さらに基本的にはユーザーがエアタグにコメントを残すことができないなど、“企業公式”のエアタグとして通常のエアタグとの差別化が図られている。

 ユーザーはフィルター機能を使ってオーソライズドタグのみを表示させることが可能で、次期バージョンではユーザーの付近にある各社のオーソライズドタグの中から、表
示したいオーソライズドタグを任意に選択できるようになるという。こうした公式エアタグを充実させることで、安心で役に立つコンテンツを増やし、セカイカメラの体験性を「底上げ」するのが同社の狙いだ。また、コンテンツの増加と並行し、次期バージョンではアプリの処理速度も改善するなどしてユーザーの不満に応えていく。

 キーワードを入れて
検索するといった従来のインターネットとは異なり、セカイカメラでは「現実空間がインターネットの入り口になる」と井口氏は説明する。企業はAPIを使うことで、場所にひも付いたフレッシュな情報をセカイカメラユーザーに訴求できるようになり、ソーシャル機能「セカイライフ」を通じて、Twitterのようにユーザーのつながりを経由した情報の伝搬も見込める。


 店舗や施設など、“場所”と関わりのあるデータを持つ企業は、自前の緯度経度情報や、住所を緯度経度情報に変換したデータを使って、APIによるセカイカメラ上でのコンテンツ配信を比較的簡単に始められるはずだ。COOの佐藤氏は「まず最初に考えたのは、グルメ、不動産、旅行などの情報と相性がいいだろうということ」と振り返る。実際、今回のイベ
ントに合わせて発表された先行事例の数々は、こうした業種のものが多かった(詳細は次ページ)。

 現状ではオーソライズドタグを配信する方法として、GoogleMapsAPIプレミアを使った頓智ドットの商用ソリューション「セカイカメラEx」のツールを利用する方法と、今回のAPIを活用する方法の2種類が用意されたことになる。また、ゼンリンデータコムの
提供する地図ソリューション「e-map」の利用企業であれば、セカイカメラとの連携オプションを使って、セカイカメラ上にコンテンツを簡単に配信できる。

 気になるのは今後無償のAPIの提供があるのかだが、井口氏は「非商用のAPIの提供も同時に検討している」とコメント。「商用、非商用にかかわらず、拡張現実をさらに豊かにするためのパートナーを
求めている。OpenAirはまだ始まったばかり。アイデアあふれる事業プランやコンテンツをご提案いただければ」と、参加を呼びかけた。

 イベント後半では、APIを利用した情報配信で先行的にパートナーシップを結んだ、ぐるなび、ネクスト、カカクコム、東急ハンズ、リクルートの取り組みが紹介されたほか、Webベースのメモ管理ツール「Evernote」を提
供する米Evernoteとの連携を予定していることも明かされた。

 ぐるなびは約5万3000件の飲食店情報をエアタグ化し、配信を開始した。店のあるエリアにエアタグが浮かび、タップすれば写真やテキストで店の紹介や予算、クーポンの情報などが確認できるほか、URLをタップすれば、Webページに遷移して詳細をみることも可能だ。まずは最低限のオーソド
ックスな機能を実現した段階だが、「もっと楽しめることができるはず」と、企画に関わるぐるなびの吉田真由美氏(企画 Department 取締役企画部問長)は期待を寄せる。

 グルメ情報としてはリクルートの「FooMoo by HotPepper」の情報もセカイカメラで見られるようになる。こちらはラストオーダーの近い店舗の情報を表示しないようにするなど、利便性
を高めるための工夫が凝らされている。「今の場所で、いらない情報は削って表示したいと思った。2次会に行こうと思ったとき、ラストオーダーが終わっていることが良くあるが、そういう時にセカイカメラを使うと便利なようにした」(リクルート 街の生活情報カンパニー 領域戦略部 集客戦略グループ ゼネラルマネージャー 渋谷昭範氏)

 さらに物件情
報として、ネクストの「HOME'S」、カカクコムの「スマイティ」、リクルートの「SUUMO」の情報がエアタグになった。HOME'Sでは同サービスが有する物件情報の一部をエアタグ化。スマイティはすべての物件情報が正確な緯度経度を持っているため、正確な位置に情報が表示されるという。SUUMOは新築のマンションの情報をその場所に表示し、街で見かけた建設
途中の物件の情報が分かるようになっている。

 店舗や物件の情報以外にも、面白い取り組みが紹介された。東急ハンズは、各店舗が扱うグッズの情報を“それを使う場所”にエアタグとして表示させる。例えば、公園にはフリスビーを、バーベキュー広場ならばダッチオーブンを表示するイメージだ。「家でダッチオーブンを見てもあまり気持ちは盛り上がらな
いかもしれないが、森の中で寒い思いをしている中なら“欲しいな”と思う」と東急ハンズの長谷川秀樹氏(IT物流企画部 部長)は話す。

 リクルートはHotPepperやSUUMOに加え、「カーセンサー」の中古車情報をエアタグとして配信を開始し、「じゃらん」の旅行情報も3月24日から配信予定と、4つのサービスをセカイカメラと連携させた。カーセンサーでは
各中古車販売店舗の場所にエアタグが浮かび、内容を見るとその店舗で販売している中古車が写真付きで見られる。じゃらんは宿泊施設の空室情報をエアタグ化し、温泉や観光地の情報も順次提供していくという。さらに、じゃらんのキャラクター“にゃらん”のエアタグを「各観光地に1つずつ用意して、“にゃらんを探せ”といったものもやりたいと企画している」(渋谷
氏)とのことで、実現すれば宝探しゲームの感覚でセカイカメラを使った旅行が楽しめるようになりそうだ。

 Evernoteとの連携は、今年後半の実現を目指して作業を進めており、Evernoteに保存した位置情報付きの写真を、エアタグとしてその場所に投稿できるようになるという。機能の詳細はまだ明らかになっていないが、米Evernoteのフィル?リービンCEO
は、「Evernoteはこれまで自分1人に閉じたサービスとして展開してきたが、セカイカメラとの連携は自分の記憶を人とシェアできるようにする初の試みとなる」と説明した。

 モバイルARの多くがナビゲーション的なサービスとしてスタートした中、ユーザー参加型の“草の根AR”として注目を集めたセカイカメラだが、今後は企業による有用な情報、さらに“電
脳キャラクター”のようなエンターテインメント性のあるサービスを盛り込んで付加価値の創出を図る。また、コンテンツが増加することでセカイカメラのAR空間では、処理速度の向上やフィルター機能の改善、情報の重み付けの仕組みがますます重要になっており、今後のバージョンアップではこうした機能が随時追加されていくはずだ。【山田祐介,プロモバ】

引用元:ロハン(新生R.O.H.A.N) 専門サイト

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